たかしん文庫vol.6~重松清著、[まゆみのマーチ]読書レビュー~

たかしん文庫
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今回は、重松清さんの「まゆみのマーチ」を読みました。

この作品は自薦短編集ということで、著者自身が選んだお気に入りの作品がつまった一冊になっています。

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短編集ということで、様々な作品があるわけですが、今回は特に印象に残った表題作の「まゆみのマーチ」「ワニとハブとひょうたん池で」の2作品に関しての感想を中心にお伝えしていきます。

構成

この作品は女の子をテーマにした自薦短編集です。

2011年の東日本大震災が発生した年に刊行され、著者印税を将来に渡って全額、あしなが育英会に寄付すると著者自信が作品の最後で明らかにしています。

同会を通じて、震災で親を亡くした子供達の支援に役立て欲しいという願いがあるそうです。

以下のような短編によって構成されています。

①まゆみのマーチ(表題作)

②ワニとハブとひょうたん池で

③セッチャン

④カーネーション

⑤かさぶたまぶた

⑥また次の春へ

③セッチャンと⑤かさぶたまぶたは、前々回の読書レビューでも紹介したビタミンFの中にも含まれています。

あらすじ

まゆみは、歌が大好きな女の子だった。小学校の授業中も歌を口ずさむ娘を、母は決して叱らなかった。

だが、担任教師の指導がきっかけで、まゆみは学校に通えなくなってしまう。

そのとき母が伝えたことは……。

表題作の他、いじめに巻き込まれた少女の孤独な戦いを描く「ワニとハブとひょうたん池で」などを含む、著者自身が選んだ重松清入門の一冊。

新作の「また次の春へ」も特別収録。

感想

まゆみのマーチ

「人に迷惑をかけることはそげん悪いことですか?」

まゆみの母が先生に言った言葉が今も頭に焼き付いています。

日本人は特に、学校でも職場でも、「いかにチームとして上手く回るか、まとまれるか」が重視されると思います。

その為、そのルールから外れる人、周りに迷惑をかける人を“悪”とし、“排除”しようとする。

私も今まではそう考えていました。真面目に、皆と上手くやっていくことが良いと思っていたし、他人に迷惑をかけないように生きるのが美徳だと思っていました。

しかしこの本を読んで、実際は、

「人に迷惑をかけて良いし、自分を無理に変えようとしなくて良い」ということを感じました。

まゆみにとっての“歌”“まゆみそのもの”です。

それを分かっていたから母は怒らなかったと思うし、その優しさにも感動しました。

人は生きていく上で、迷惑をかけずに生きることは不可能で、色々な人の力を借りながら前へ進んでいきます。

その一番の味方でいないといけないのはやはり“両親”だと思ったし、“何もかも否定し、自分の理想を突きつける親”よりかは、まゆみの母のように“どんな時も肯定し、側にいてくれる親”の方が、何倍何十倍も素敵だと思いました。

ただ、この作品に限らず重松さんは、厳しい現実も共に伝えてくれます。

まゆみの将来の姿は理想通りとはいえないかも知れない。

でも、親がずっと側にいてくれた、味方でいてくれたという経験は財産で、それだけで幸せな気持ちになれると私は確信しました

自分を苦しめてまで一人で我慢し続ける人、うまく社会になじもうと必死に自分を押し殺し疲弊している人、子供との関係性に悩む親など、様々な人の心に刺さり、優しく寄り添ってくれる作品です。

ワニとハブとひょうたん池で

読んだだけでは全く想像がつかないような、斬新なタイトルにまず心動かされました。

ストーリーを読み進めていくと、「そういうことだったのか!」と、このタイトルの本当の意味が明らかになります。

“いじめ”というのは昔も今も変わらず存在している訳ですが、「なぜなくならないのか」というのはずっと疑問に思っていました。

ただその人が嫌いだから一方的に傷つけるだけだと思っていたのが、本当は皆ゲーム感覚で楽しんでいるだけなんだと、この作品を読んで思いました。

ゲームをやっている人は当然楽しいし、罪だという意識のかけらもない。だから”いじめ”ってなくならないのかなと。

その中でも、主人公の「ミキ」はいじめと一人で闘い、最終的には自らの手で乗り越えていきます。

その姿にとても勇気づけられたし、心の強さを感じました。

ただ、いじめられた期間の傷は痣となって一生付きまとうし、もしかしたら更に傷が深くなりこの世から姿を消してしまうかも知れない。

いじめられた経験がある人、いじめた経験がある人、周囲でいじめを黙って観てた人、全ての人にもう一度”いじめ”について考えて欲しいなと思わせてくれる作品でした。

まとめ

いかがだったでしょうか。

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今回紹介したのは表題作のまゆみのマーチワニとハブとひょうたん池での二つでしたが、その他の作品も胸にグッとくる感動作品ばかりです。

逆境を抱えている人にそっと寄り添い、エールを与えてくれる短編集。泣けてスッキリもできるのでおすすめです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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